2008年4月23日
酸素の重要性
研修委員長 木村圭一
精神論はそろそろネタ切れですし、どうしても内容がセクハラになってしまうので、学問的な事を書いてみたいと思います。
私は外科医なので不十分な事を書くと思いますが、是非色々突っ込んで下さい。
生物にとって酸素は重要なもので、酸素がない環境でもしばらく生きられるのはスーパードクターKぐらいのものでしょう
��意味が分からない研修医の先生は全巻読み直して下さい)。当然医療現場でも酸素は非常に重要で、
病院内にはあちこちに酸素を投与するための酸素供給源と器具があります。
しかし、酸素投与に難色を示す人がいます。COPD(慢性閉塞性肺疾患)だったらどうするんだ?
未熟児にやったら肺障害の可能性がある、パラコート中毒の人にも禁忌だろ、、、、と。
まあ、そう言う場合には、その時考えるとして、、、、、多くの場合、状態の悪い人には酸素を投与しましょう。
二次救命処置講習会とか外傷の講習会では、患者さんを診たらかなり早い段階で酸素を投与しなさいと教えられます。例えば、
脈が速い患者さんを診たら、まず酸素、点滴、モニター装着です。モニターを見てから酸素投与ではありません。
詳細は勉強して頂くとして、全身の細胞に酸素を行き渡らせるためには、血液中に酸素が充分含まれていて、
酸素を含んだ血液が全身を循環する必要があります。つまり、
全身に酸素が行く量 = 心臓が血液を送り出す量 × 血液中の酸素量
となります。状態が悪い人は、まず心臓が血液を送り出す量が減ります。よって血液中の酸素量が正常だったとしても、
酸素が全身に行きません。よって、これだけでも状態が悪い人には酸素投与が必要という事が分かります。
酸素を投与すると血液中の酸素量が増えますので(通常少し増えるだけですが、その少しが相当な効果を生む場合が多いです)。
また、血液中の酸素量が減る場合もあります。最近はバイタルサイン(血圧、脈拍数、呼吸数、体温など、、、
バイタルとは重要と言う意味です)と一緒にサーチがいくつ、、、と言う事を看護師さんや救急救命士さんも報告してくれます。サーチとは、
サチュレーション(saturation)のことで、飽和と言う意味です。血液中に酸素がどれだけ含まれているかと言う事を「ある程度」
予測できる指標です。血液中の酸素量は
血液に含まれる酸素量 = ヘモグロビン結合酸素 + 溶存酸素
で表されます。前者がほとんどを占めています。サーチはこの前者を知るための一つの手段です。「ある程度」
と強調したのはそのためです。書いてみますと、
ヘモグロビン結合酸素 = 1.36 × ヘモグロビン濃度 × SaO2
です。1.36は突っ込みどころです。1.34だとか、1.39だとか色々意見があるようです。
SaO2はヘモグロビンというたんぱく質に酸素がどれぐらいくっついているかという指標です。一般的に、サーチと言った場合には、
パルスオキシメーターという機械で測っていますので、SpO2と書きますが、同じ事です。また、ヘモグロビン濃度は血液の濃さを表します。
サーチが同じ100%であっても、ヘモグロビン濃度が薄ければ酸素の量は少ないです。
この事を分かりやすく言えば、無馬君がうちの病院の講義室でコンサートをしたら満席になるでしょう。その場合には、SaO2は100%
です。X-JAPANが東京ドームでコンサートをしたら、やはり満席でSaO2は100%ですが、観客の数は全然違いますね。
ヘモグロビン濃度が会場の大きさで、SaO2が満席かどうかを示す指標です。サーチが100%ですと言うのは、
満席かどうかを示しているだけです。
また、溶存酸素と言うのは血液に溶ける酸素の量で、まあ、立ち見みたいなものですね。狭い会場で観客数を増やして儲ける
��状態の悪い人の全身に酸素を行き渡らせる)ためには、立ち見を増やすしかないと言う事です。
もちろん広い会場にするのが一番効果がありますが、、、医療の場合には輸血すると言う事ですね。
「大隅○○地区消防組合です。50歳男性の高エネルギー外傷です。現在ショック状態ですが、SpO2は100%です。
酸素15リットル、リザーバーマスクで投与中です。」「え??サーチ100%なのに何で酸素なんてやっているの??」
と言って酸素を外す人がまだ多くいるようです(当院にはいないでしょうが)。これは、無馬君のコンサート状態なので、酸素投与が必要です!
酸素の重要性を再認識しましょうね!
ちなみに、サチュレーションは、サーチュレーションではないのに、何故「サーチ」と言う人が多いんでしょうね。
PHSをピッチと呼ぶのと交換すべきでは???「ピーエイチエス」なので「ピーチ」じゃないでしょうか?「サチ」
と言うのが言いにくいのならば、「サッチー」、、、どこかのプロ野球チームの監督の奥さんとかぶるからでしょうか??
何故サーチと呼ぶかについて、"http://intmed.exblog.jp/6027340/">当院の近くで開業されている先生も疑問を持たれていました。
先日、酸素投与の重要性は教えていただきましたが、無馬先生のコンサートの例えはすごく分かりやすいですね!
返信削除ちなみにサーチという表現はこちらに来て初めて聞いたので、最初何のことなのか分かりませんでした。大学で実習していた時は、サチュレーションまたはエスピーオーツーと言っていました。方言のようなものなんでしょうか。
平素よりお世話になっております。今回は御高診ありがとうございました。
返信削除軍曹ご指摘のごとく、小生無馬が東京ドームでコンサートを開催していた場合、Saturation 0.1%程度になりました。
病院の講義室のSturation 100%程度で満足せず精進していきたいと思います。
お忙しい中、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
有留先生、無馬先生、コメントありがとうございます。
返信削除毎日忙しいとは思いますが、ブログ記事お願いしますね!毎日更新を目指していますよ!