2008-03-29

病院長より

2008年3月28日

病院長より

病院長 井戸弘毅


来年度から当院での研修を希望している学生2名が医師国家試験に見事合格しました.院長しているとつらいことばかりですが,
久しぶりに元気が出る知らせでした.当院は少ないながらも毎年研修医が入職しています.また,新しい研修制度になって初めて,
当院で後期研修を行う研修医も出てきました.現在多くの学生さんも見学に訪れており,これからさらに研修医が増えていくかもしれません.
医師不足の中,日本の端っこにある大隅にこれだけの若い人材が集まるのは有馬君,城戸君,田頭君などの研修医が大きく育ち,
自分たちの研修に自信をもっており,その自信の下で研修医の勧誘を行っていること,木村,
田村などの指導医が昼に夜にいい指導を行っていること,田口の言葉巧みな研修説明会でのプレゼンなど多くの要因があります.しかし,
なんといっても,教育管理部の臼井さんが身を粉にして全国を駆け回り,当院をアピールし,また,母親のように研修医を可愛がり,
時には叱咤激励し,口うるさい指導医に対してもきちんと"指導する",など研修医の要になって働いてくれたおかげだと思います.
現在の状態は臼井さんなしではありえなかったことと,院長として大変感謝しております.これらかもよろしくお願いします.

 新しく研修をはじめる二人には期待と不安,いろんな複雑な思いがあるでしょう.でも,心配は要りません.指導医はみんな優秀で,
君たちのことを可愛く思っています.臼井さんがいつでも愚痴を聞いてくれます.院長も君たちを大切にします.

君たちにとって,100%満足のいく研修ができないかもしれませんが,君たちを一人前に育てるための苦労,努力は厭いません.

一緒に働けるのがとても楽しみです.4月1日,元気な姿で会いましょう.よろしく!


大隅鹿屋病院

院長 井戸弘毅



2008-03-25

カルテの書き方

2008年3月25日

カルテの書き方

研修委員長 木村圭一


 カルテは患者さんの経過を知るのに非常に重要な書類で、それ以外の使用はいけないと思う人もいると思いますが、
勉強のために使うのも良いと思います。


 私が学生実習で回った科の研修医の一人はすごいカルテを書いていました。量はもちろんですが内容もです。
レントゲンなどを撮れば色鉛筆でスケッチし、どこが悪いのか一目瞭然でした。また文献などを調べたら、そのコピーを貼り付けるのではなく、
自分で全部書き写していました。


 そいつは暇なだけじゃんと思う人もいるでしょうし、そこまでやるのは難しいかも知れませんが、
出来るだけその先生に近いカルテを書きたいものです。後で見返した時に、自分でも感動するはずです。自分はこの人の治療において、
これだけ頑張ったんだ、、、、と。


 今私は当然そんな事していませんがm(__)m、研修医の時は頑張りました。


 初めて亡くなった患者さんの時です。その方は赤芽球癆と言う診断で、何度も輸血を繰り返していました。
そのためにヘモクロマトーシスと言う病気になってしまいました。私は内科研修中で、珍しい病気は全部私に、、、
と言う事だったので主治医にさせて頂きました(研修医が私一人だったので)。


 体の中に鉄が沢山ありすぎて起こる病気ですので、鉄を外に出す治療をします。瀉血(血を出す)すれば良いですが、
その人は貧血があるので出来ません。よってキレート剤と言うものを使います。今は"http://www.novartis.co.jp/news/2005/pr20051115.html">1日一回飲むだけで良い薬があるようですが、
当時は毎日だったか週に1回だったか注射を必要としていました。デスフェラールという薬です。


 その薬の説明文書をカルテに書き写しました。指導医の先生には何も言われませんでしたが、看護師さんに(当時はまだ看護婦さんです)
かなり褒められました。勉強になりましたって。無馬君のように、これで夜もモテモテだったらもっと良かったのですが、、、(+_+)。


 残念ながらその患者さんは急に状態が悪くなって、真菌(だったと思いますが、、、あり得ない!と田村先生突っ込んで下さい)
の髄膜炎となり、顕微鏡で激しく典型的な莢膜を見せて頂き、DNR(Don't resuscitate:
心肺停止しても蘇生を行わないで自然に亡くなって頂くことです。癌の末期や重症な患者さんにはそうする事が最近多いです)
が取ってなくて別の指導医に怒られたり、骨髄穿刺をさせて頂き、赤芽球癆ではないと結果が返ってきて、実は白血病?MDS
��骨髄異形成症候群)?などと色々勉強させて頂きました。が、今はすっかり忘れてしまっています。
赤芽球癆とかMDSとか真菌の髄膜炎とか絶対に自分が診る事ないだろうと学生の時に思ったのですがね。


 少し脱線しますが、当時「"http://ja.wikipedia.org/wiki/もう恋なんてしない">もう恋なんてしない
をカラオケボックスで歌うと映像にパジャマを着た若い男の人が出てきていたのですが、
そのパジャマの柄がその患者さんの着ていたものと同じで、カラオケに行くたびに(他に歌える歌がなかったのです(^.^))
その患者さんの事を思い出しました。今度カラオケ行ったら、「もう恋なんてしない」を歌ってビデオがどうなっているか確認したいと思います。
女性の体表解剖のビデオでない事を祈ります。


 カルテに色々と書く事は看護師さんの教育にもなります(看護師さんは、
字が汚くて読めないのに(^.^)一生懸命医者の書いている事を読んでいるようです)。また書き写すと言う作業は勉強にもなります。
また最悪の場合裁判になっても、裁判官に心証が良いと言う噂です。


 私が研修医の時に言われた言葉です。「どうせ書かなきゃならないんだから、世界一のカルテを書きましょう!」


 ところで「"http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND51838/index.html">もう恋なんてしないなんて言わないよ絶対
って意味が分かる人がいたら教えて下さい。もう恋なんてしたくなくなくな?い?って事でしょうか。



2008-03-24

アリモッコリーズ

2008年3月24日

アリモッコリーズ

2年次研修医 有馬 喬 


先日、「地図で場所の分かる都道府県ランキングの最下位は宮崎県」と新聞にあっ

た。

東国原知事の健闘で、一躍有名になった県である訳だが、今後の課題も見えたア

ンケートだったと思われる。


もし、「有名研修病院ランキング」なんてのがあったら当院は確実に最下位近くに

ランクインするだろう。

しかし、このような世俗的ランキングの順に良き「臨床医」が育成できている訳は

ない。

とはいえ、無名研修病院に学生さんに見に来ていただく事はかなり困難である。

最近、「涙のスカウト部長・臼井さん」を始め、忙しい中当院の発展のため研修説明

会に行って頂いている、「心肺停止患者に過換気はいけません・鬼の救急軍曹」、

「カラオケの次の日は筋肉痛、リンダ・内科部長」、「若き寡黙な外科医・田口先生

」、「去り往く誇り高き小児科医・城戸先生」、「院内ではすっぴん研修医・田頭

先生」、といった先生方おかげで病院実習に来てくれる学生さんもかなり増えてい

る。

その辺は幹部の方はちゃんと評価すべきであると思う。


先日も、右の写真にあるように実習生さんが来てくれた時の1枚である。実に楽しそうに実習をしているように写っている。
height="204"
alt="kenshuiblog20080324-001"
src=
"http://202.133.118.29/trainee_doctor//media/img_20080324T085433937.jpg"
width="276"
align="right" />

しかし、どのような実習をしてもらえば良いのか毎回考える。

先週来て頂いた2人の学生さんは満足していただいたであろうか?

おそらく少し物足りないと感じてはいないだろうか?

なぜなら、アリマックマは敢えて「ここまですれば学生さんも満足だろうなあ。」

と思う一歩手前で実習を終わるようにしている。

別に一気に見てもらってもいいのだが、時間的なものもあるし、実際一気に見れる

ほど浅くはない。

従って「後もうちょっと見たいなあ・・・」位で終わる位が適切かと思う。

何事も「腹八分目」が良い。

それはドラマを1週間楽しみに待って見た場合と、DVDで一気に見た場合では、1週間

待った方が感動するのに例えられる。

一気に満腹になると、「もういい。」って感じになる。


今回来て頂いた学生さんは夏にもう一度来てくれるということらしい。"kenshuiblog20080324-002"
height="207"
alt="kenshuiblog20080324-002"
src=
"http://202.133.118.29/trainee_doctor//media/img_20080324T085435140.jpg"
width="276"
align="right" />

(この時点で既に、アリモッコリーズへの誘いは始まっている。)


しかしやはり、夏に来てくれたときも若干、物足りないくらいで実習を終わっても

らうことになる。


そして、学生さんはもっと続きが見たくなる。


つまり、見学に来てくれた学生さんのドラマの本当の続きは、1年後当院でアリモッ

コリーズに入団した後にしか見れないようになっている訳である。


・・・ふふふ。


って、そんな訳はないが、せっかく来て頂けるので精一杯の対応をさせて頂きたく

思っている。

今週は5人の学生さんが来られるので楽しみである。



共通の敵





2008322

共通の敵

研修委員長 木村 圭一 

最近記事の内容が担当者によって明確に分かれてきているようですね。特に指定している訳ではないのですが。当院の研修医ブログは内容も、書く時期も自由意志です。書きたい人が厚井さんに原稿を渡して、厚井さんがアップして下さいます。特定の人の記事が続くと、別の人がまずい!と思って書くと言う訳です。最初は週に1回ぐらい更新できればと思っていましたが、かなり頻繁に更新されていますね。ちなみに頻回(ひんかい)と医療従事者は良く言いますが、業界用語らしいです。 

私は田村先生の様にアカデミックな事は書けないので(^.^)、精神論?を続けたいと思います。ちなみに、いつもこんな事を言っていてうっとうしい奴だなと思われているかどうかはエビデンスレベル未確定です(クラスIかもしれません)。 

組織と言うのは色々と難しいです。友達のようにみんな仲が良いと上手く行くかと言うとそうではありません。みんなが平等に仕事をしないと不満が出ますが、仲が良いと不平等が出る事があります。嫌な仕事も誰かがしなければなりませんが、仲が良いばかりではその仕事を担当する人はなかなか決まりません。このブログは前述したように自発的な意志で続いていますが、いつまでもこのままのシステムで良いかどうかは分かりません。 

結局全員が納得する決定と言うのは無理だと思います。よって、誰かがその不満を受け入れなければなりません。受け入れると言っても解決する事は無理なので、罪をかぶる必要があります。それが上司、あるいはすぐ下の副部長などです。 

上司が理不尽な仕事ばかり押し付ける、、、、そうそう!あいつ最低の上司だよね!とみんなが言う、、、、ある面では能力のない上司ですが、ある面では有能な上司です。組織が反上司と言う事でまとまるのですから、、、、、余り良いまとまり方ではないかも知れませんが、悪者を買って出る上司がいる所は良い組織でしょうね。 

私が愛用しているMacintoshというパソコンを作っているApple社のCEO(Chief Executive Officer;最高経営責任者)であるSteve Jobsは社内で嫌われているかどうか分かりませんが、自分を雇ってくれた役員を全員クビにしたとか、色々とすごい人らしいです。商品に関しても全部彼がチェックを入れ、中の基盤のデザインにも注文をつけるらしいです。こんなもの誰が見るんですか?と技術者が言ったら「俺が見るんだ」と言ったと言う逸話が残っています。 

この病院がより良い病院になるためには、共通の敵となる鬼軍曹が必要だと思います。誰かなってくれませんかね〜。






2008-03-21

プロ野球にたとえてみました

2008年3月21日

プロ野球にたとえてみました

後期研修委員長 田村幸大


当院は今でこそ医師数が25名前後と増えていますが、5年前に私が赴任した当時は15

名位でした。

また、以前勤務していた徳之島徳洲会病院では3名しかいない環境も経験しました。

"http://202.133.118.29/trainee_doctor/archives/2007/12/post_24.php">
http://202.133.118.29/trainee_doctor/archives/2007/12/post_24.php


これを野球にたとえると、いくら打ち込まれてもリリーフピッチャーがいないチー

ム、いくら打てなくても代打を出す事が出来ないチーム、怪我人が出たら試合が出来

なくなるチームという事になります。


打ち込まれて火だるまになっているのにリリーフピッチャーを出せないチームが強い

はずがありません。

ここ一番で得点のチャンスなのに当たりが出ていないバッターしか出せないチームが

勝てるはずがありません。

怪我人が出て9人揃えられなければ試合自体が成立しなくなります。


ちなみに3年前は内科医が二人しかいない中で多くの患者さんに対応しなければなら

ず、一人がピッチャー兼キャッチャー兼内野全部の守備、一人が外野全部の守備をし

ているような感覚でした。今もセカンドとショートをまとめて守っている感じです

が、人が増えてだいぶ守備範囲を狭くする事が出来ようになりました。


私は有名な研修病院ではなく、色々悩んだ末に当院での研修を選びました。研修医が

二人しかいなかったので、上の先生に可愛がって頂き、多くの経験をさせてもらえ、

どんどん成長出来たと思います。

"http://202.133.118.29/trainee_doctor/archives/2007/12/post_7.php">
http://202.133.118.29/trainee_doctor/archives/2007/12/post_7.php


たとえてみればスター軍団揃いで中々試合に出られない巨人軍ではなく、自分がどん

どん試合に出られる弱小球団楽天を選んだという感じです(楽天関係者の方々、不快

に思われたら済みません)。しかし、その楽天も昨年はあと少しでAクラスというと

ころまで来ました。それは、ある一選手が駄目でも交代して活躍できる選手が揃って

きたからでしょう。常に安定して戦う事が出来る戦力が整ってきていると思います。


そんな訳で当院も地道に研修医の教育に力を注ぎAクラス入りを目指しています。先

発して完投するしかない状況、毎日先発しなければならない状況では強いチームにな

れません。強いチームになるために研修医教育に力を注ぎ、調子が悪ければいつでも

交代が出来る状況、怪我人が出ても戦力が落ちない状況が必要です。


人にはそれぞれ合った環境があります。巨人軍では無く、楽天を選んでたくさん試合

に出て花開く人もいる事でしょう。学生の皆さん、時には楽天(当院)の見学もして

みて下さい。


ちなみに現在は以下のメンバーでAクラス入りを目指して取り組んでいます。

大隅アリモッコリーズ:あまり強そうなチーム名ではありませんね(^^ゞ

監督:井戸弘毅

ヘッドコーチ:中山義博

鬼の打撃コーチ:木村圭一

セカンド兼ショート兼守備コーチ:田村幸大

有馬先生は走るのが苦手だから、あまり走らなくて良いファーストかな。

城戸先生はつかみ所がなく適切なポジションわかりません。好きなところを守って下

さい。

立石先生は体型的にキャッチャーでしょう。

田頭先生はいつも元気に走り回っているから外野なんかいいかもね。

いつも昼寝をしていて、ここ一番の時に覚醒して活躍する劉先生は代打がピッタリで

す。

研修医募集の業務をこなしながら言う事を聞かない研修医の尻を叩いてレポートを出

させている臼井さんはスカウト部長兼走塁コーチ。



2008-03-19

とある研修医の休日

2008年3月19日


とある研修医の休日


2年次研修医 有馬 喬

 

 

これは2006年4月、大隅鹿屋病院に突然やって来たとある研修医の物語である。

 

時は2008年3月。

もう目の前まで来ている春に心が踊る。

白い雲と雲の隙間を、自衛隊の戦闘機が飛行機雲を作りながら飛んでいる。

スロットル全開で昇っていくその青い空の先には一体何があるのだろうか。

答えは知っていても、そこに行けない今はただ気になる。

 

2年前の春、ひとりの癒し系研修医が鹿屋にやってきた。

彼の好きな曲はJohann PachelbelのCanon。 

そんな彼は癒し系の風貌であるが、このどこまでも続く青い空を今日の戦闘機のよ

うに昇って行こうとする強い志を持っていた。

そんな彼をこの病院はとても暖かく受け入れてくれた。

 

今日は、彼が育ってゆくその姿を、運転免許を取ったばかりの普通の人が初めてサ

ーキットを走り、レーシングドライバーに育っていくのに例えてみる。

 

右も左も分からなかった彼を、よく眠る某内科指導医は優しく微笑み、左と右を教

えてくれた。

 

右と左が分かり、とりあえず真っ直ぐ思いっきりアクセル踏んでみた彼に、カラオ

ケでやたら高く飛び跳ねる某内科部長は、ブレーキでちゃんと止まることの大切さ

を教えてくれた。

 

今は転勤されているが気のあった二人の先輩内科医は、彼にアクセルの使い方を指

導してくれた。

 

左と右が分かり、アクセル、ブレーキの使い方が分かった彼に、鬼軍曹を目指す某

救急部長は「右と左が分かって、アクセル、ブレーキも使えるのに、何で曲るべき

ところで曲らないんですか?はい。曲った後は指導医のサインをもらってください。

」と怖い顔で曲るべき場所を教えてくれた。

 

その途中、飲み会で「ちょっとこっち来てん。誰がそこ座っていいって言った?」と

飲み会での彼の席を常に指定し、「お前は俺と同じ匂いがするなあ。同い年だった

ライバルやったかも知れん。」と意味不明なことを言い放ち、言い放ったかと思い

きや、次の日病院で会っても笑顔ひとつ見せない某外科部長は格好良く曲るコーナ

リングを教えてくれた。

 

一通り車を走らせる最低限の技術を身につけた彼に、彼を越える癒し系某整形部長

は、彼がうっかり忘れていたバックの仕方を教えてくれた。

彼は前に進むしかできなかったことに1年間気付かなかったのである。

 

ちなみに「国家の品格」、また「低炭水化物ダイエット」について、通年指導して

くれたのは某副院長であった。

車に乗る者は車の知識だけではいけないと彼は気付いた。

 

車を選ぶセンスは皆無だが、常に遠くから見守っていてくれる某院長。

ひとたび笑うと八重歯が妙に可愛いのは作戦か?

 

2年目、彼は再びカラオケで飛び跳ねる某内科部長の元に帰った。

「結構俺って早いんじゃない?」と勘違いを始めた彼に、「まだ基本動作が分かった

だけ。僕なら10秒はタイムを削れる。」的なことを言って、まだまだレーシングド

ライバーとして荒削りであると教えてくれた。

 

灼熱の徳之島で毎日、朝回診で彼と喧嘩になった某総長だが、サーキットしか走っ

た事のない彼にダート(砂利の上)の走り方を指導してくれた。

内科医のいない島で、耐え抜いたのも当院の指導があってのことであると今でも彼

は確信している。

 

都会の病院で心の病気を診る某院長。

いったん車から降りて自分の脚でゆっくり歩いてみると、乗っているときは気付か

ない視点を、彼に教えてくれた。

心の病気に興味のない彼にも、興味に関らず知っておかなくてはいけないことをち

ゃんと教えてくれた。

 

同じ地域のサーキットでありながら、その性質は全く違うところで、女性の病気と

子供の病気を教えてもらった。

車に乗るのは自分だけではないと彼は学んだ。

速けりゃいいって物ではない。

女性や子供に優しい、乗り心地良さを身につけることも大事であると分かった。

しきたりの違いに戸惑いつつも、何とか彼は乗り切った。

 

そして、彼は見た目にも、中身も一回り大きくなって当院に帰って来た。

しかし、パワーが上がっても乗ってる本人が重くなっては速くは走れない。

これを「パワーウエイトレシオが悪い。」とレースでは表現する。

現在、彼は彼を越える癒し系某整形部長のもとで日々、走り込みをしている。

 

その他、ここに書かれなかった指導医、看護スタッフ、事務の方々を始めとする多

くの方に支えられ今日の彼がいる。

 

今にも緑芽吹きそうな今日。

彼に代わって、一言だけ言わせて頂く。

 

今まで、本当にありがとう。

また、次に会える時まで。

 

 

・・・さようなら。

 

 

 

 

まあ、明日も仕事なので次に会えるのは明日なのだが・・・。

おしまい。



2008-03-18

バランス感覚

2008年3月18日


バランス感覚

後期研修委員長 田村幸大

 

臨床の現場では教科書に載っていないような色々な事が起こります。

機械弁を使った弁置換術後の患者さんが脳出血を起こした

→抗凝固療法はどうしよう?

腎機能が進行性に悪化している患者さんの血液培養からMRSAが出た

→バンコマイシンを使わないといけないか?ザイボックスにするか?

外来でかかりつけの患者さんが腰が痛いと言っている。しかし、腎不全も心不全も

持っている。アセトアミノフェンは効かないらしい。

→鎮痛剤はどうするか?

他にも色々あります。

「事件は会議室で起こっているんじゃない。現場で起こっているんだ!」と叫びたく

なるような事がよくあります。

有馬先生がやってくれた造影剤腎症の勉強会から研修医の先生方に一番学んで欲し

かった事は、「腎機能障害の人に造影剤は使わないようにしましょう」という事では

無く、「目の前の腎機能障害の患者さんに造影剤を使わなければならない。それなら

ば何に注意して使うか?投与した後は何に注意してフォローするか?」という事でし

た。「使わないようにしましょう」だけであれば、勉強会をするまでもなく、単純に

「クレアチニン1.5以上は造影剤投与禁止!」と言うだけで済みますから。

教科書的に「腎機能障害があれば造影剤を投与しない」という事を、どんな状況でも

忠実に守る人は診断の遅れからどこかで必ず患者さんを失います。

逆に「造影剤腎症なんて気にしなくて良いと習ったから、CTを撮る時は必ず造影する

んだ」という人も、どこかで必ず腎機能障害の進行を早めて患者さんを透析に追い込

んでしまいます(造影剤腎症を発症した人の生命予後が悪いというデータも出ていま

す)。

目の前の患者さんの何週間か先の腎機能の事よりも、診断をつけなければ何時間(場

合によっては何分後)か先の命が危ない状況では確実に検査が優先されます。一方、

単純CTやエコー、MRIなどの代替手段でも診断を付けられる病態で、緊急性もないの

に何も考えず造影CTを撮影するのは非常に愚かな事です。ちなみにup to dateの”造

影剤腎症”の中では、「造影剤腎症予防の第一選択として造影剤を投与しないで済む

方法を検討する」と書いてあります。そこを検討した上でやはり造影剤投与以外に診

断方法が無い時に勉強会で出てきた補液やメイロンやNアセチルシステインが出てく

る訳です。

また、リスクを知った上で造影剤を投与すると言っても、どのような状況(具体的に

は脱水とか糖尿病とか心不全とか)がリスクが高いのかを知らなければなりません。

リスクが高い人にリスクを承知で造影剤を使用した際は、その後のフォローアップも

重要です。しかし、造影剤腎症では非乏尿性腎不全が多いのです。単純に尿量だけの

フォローでは腎機能悪化を見逃す可能性があるという事も知らなければなりません。

一つの問題に対しての答えは教科書に載っていても、複合した問題に関しての答えは

なかなか見つけられません。色々な事を考えながら最も適切な治療を考えるしかあり

ません。「腎機能障害があっても造影剤を使っても良いか、否か」という視点では無

く、「この患者さんに最も適した検査、治療は何か」という視点で考えていくしかあ

りません。

実は「注意しろ注意しろ」としきりに言いながら、慢性腎臓病の患者さんをたくさん

診させて頂いている関係上、腎機能障害の患者さんに対して造影剤投与をよくしてい

ます。他にも使用時に届け出が必要なカルバペネム系の抗生剤を一番使っているのも

内科です。できるだけ温存しましょうとしきりに言っているザイボックスを一番使っ

ているのも内科です。色々なベネフィット、リスクを検討した上で、それが最適だと

思うから使っています。

一例として造影剤腎症を取り上げましたが、「内科医は内科的治療に拘りやすい」

「外科医は外科的治療に拘りやすい」と言われています。常にバランス感覚を持ちな

がら最適の検査や治療を提供できるよう経験を重ねていく事も大事な研修だと思いま

す。ローテーションしている科と関係無く他科の先生に気軽に相談できる当院は恵ま

れた環境だと思います(他院で上の先生に断りなく他科の先生に相談していたら怒ら

れたという先生も知っていますので)。

この環境を上手く利用してバランス感覚を持った医師として成長していって欲しいと

思っています。