12月14日(金)
内科研修①
研修医2年次 有馬 喬
木村先生の話に続き、今日は研修が始まったばかりの頃の話である。
僕は4月から内科研修であった。指導医はご存知、劉先生。
初めの1週間は午前中1、2時間程度、外来で採血やルートキープをした。
実際は、「採血とルートキープの練習」なのだろうが、その手技が自分にとっては
練習であっても、患者さんにとって練習なはずがないので、自分は今までいかなる
手技も実際に行う瞬間は練習と思ってやったことはない。
練習はその患者さんにする前に終わらせておくことだという認識でやっている。実
際には練習になってしまうのだが、練習だと思いながらすると、うまくいかないこ
とが多い。結果的に不必要な痛みを与えることにもなる。どんなに簡単な手技でも
その瞬間は練習だと思わないほうがいい。
最初からうまくできるはずもない。初めての気管挿管の時は、喉頭鏡で喉頭展開す
るが、全くもって何も展開しない。話も展開しない。
「劉先生、何も見えませんよ。壁です。」
「壁?まあ、ちょ、ちょっと替わってみよう。」
ものの、10秒足らずで挿管してしまった。
「内科の挿管はほとんど全例、筋弛緩がかかってない状態でやるから、少し難しい
。まあ、次の機会に。」
まあ、次に機会までにICUにある人形で練習でもするかぁ、と軽く考えていたが、次
の機会は、なんと次の日にやってきた。当院はそういう病院であった。
「しまった。できるかな!?」
当時の介助についてくれたベテラン看護師さんは言った。
「○○さん!きばっど!」
しかし、どう見ても「きばっど!」の視線はこっちを向いていた。
「できるかな?とか思ってる場合じゃないぞ!」
結局、今回も劉先生に交替してもらった。
「はあ↓、いかん!いかんぞ!」
その日の夜、僕はICUに忍び込み、人形で練習をした。
まあ、人形も実際の挿管とは感触が全く違うのだが。この時は練習と思ってやった
。
入職して間もない頃だったので、夜中ICUの奥から、ぶかぶかのヤンキージャージみ
たいなの着て、スリッパをパタパタさせて歩く変な男を見て、ICUの看護師さんは
「何?あれ?」と思ったに違いない。不審な行動とって申し訳ない。
そして何週間かして、その時が来た。
その日は火曜日、劉先生は外来日だった。
他の内科の先生も外来か、内視鏡。
病棟には自分だけ。
呼吸状態が悪いと劉先生に報告した。
「外来多いから、ちょっとやってて。すぐ行くから。もう2回見たから何とかできる
でしょ?」
「おゎ!独りかよ!?」
「何とかします!」
いつも発言だけは強気な自分である。(--;)
1回目、「お~こりゃ、見えん!」
失敗。
すぐにバックバルブマスクで換気。
劉先生、まだ上がって来ず。
2回目、「ん?何か穴が見えるぞ?これか??」
チューブを入れた瞬間、空気がシュポーと飛び出した!
「やったか?」
すぐに確認。入ってる。
「じゃあ、確認のレントゲン呼びますね。・・・よくやったね、先生!」
・・・。
何週間か前に「きばっど!」と言った看護師さんだった。
ふと気付くと、後ろに劉先生もいた。
「先生、遅いですよ~。入らんかと思いましたよ。」
「いや~、1回目ダメだった時からいたんだけど、すぐマスクで換気してたから、も
ちょっと見てても大丈夫かなと、お、思ってね。ごくろうさん。」
緑吹き始める初夏の頃、その日のビールの味は忘れない。
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