2007年12月20日
感染症
2年次研修医 有馬 喬
ペニシリンGという抗菌薬がある。
肺炎球菌や連鎖球菌などのグラム陽性球菌や一部の嫌気性菌を得意とする抗菌薬で
ある。また、淋菌や髄膜炎菌にも有効である。
この抗菌薬、上述の得意とする菌に対して、極めて強力な抗菌作用を発揮する。し
かし、血中での半減期が30分と短く、あっという間に排泄されるため、頻回投与が
必要であり看護師さん泣かせではある。
まるで日本刀のような鋭い切れ味を持ち、そしてその引き際は美しい。
・・・何か思い出さないだろうか?
この「日本刀のような切れ味、そして美しい引き際」は僕が何かを語る時、必ず使
うフレーズである。
そう、「わさび」である。
わさびは口に入れた瞬間、芳醇な香りと供に極めて鋭い辛さが一気に味覚、嗅覚を
強烈に刺激し、そして気が付くと何事も無かったかのように消えている。
素晴らしい。まさに、今の日本人が忘れている日本の心である。
(日本の心は「国家の品格」教育委員長である利光先生にお願いするとして、これ以
上は語らない。)
これがたとえば唐辛子ならどうだろう?
口に入れた後、1テンポ以上遅れてだらだら辛さがやってくる。そしていつまでも口
の中に居座る…。勘弁してくれ。自分は、唐辛子が嫌いなわけではないが、普通に
食べると、バスタオルが必要なくらい発汗する。
例のごとく、さらに脱線するが、わさびはアブラナ科ワラビ属、日本産の植物であ
る。
水の中(いわゆるわさび田)で育てる「水わさび」、畑で育てる「畑わさび」がある
。
刺身を食べる時用いるのが水わさびの根をおろした物で、居酒屋のわさび漬けやた
こわさなどは畑わさびの葉や茎を用いている。
水わさびの根は、太く大きい。しかし畑わさびの根は細く小さい。自然界に自生す
るわさびはいわゆる畑わさびである。
わさびは、根から特殊な物質を放出し、他の植物が周りに生えてこないようにして
いる。この物質は放出したわさび自身の成長も抑制してしまうため、畑わさびの根
は細い。しかし、水わさびはわさび田を絶え間なく流れる水でこの物質が適度に洗
い流されるため、根の成長が抑制されず、大きくなるのである。
話を戻すと、ペニシリンGは多くの菌には効かないが、有効な菌を確実に倒せる。も
ちろん、投与量や投与間隔を適切に処方した場合であるが。
いわゆる広域抗菌薬は多くの菌に有効だが、抗菌力自体が強いと言うわけではない
。中途半端な抗菌力のために、耐性菌を医原性に作ってしまうこともある。抗菌薬
を処方するすべての医師は、科を問わず、感染症を学ぶことが義務であると思う。
ペニシリンはすべての抗菌薬の基礎である。
柔道で言うところの「受身」
合唱で言うところの「ら、ら、ら、ら、らー」
応援団田村先生で言うところの「押忍!」のようなものである。
青木眞先生の「レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版」を拝読させてい
ただいている。第1版ももちろん持っているが、さらに目からうろこ(コンタクトで
はない)的な内容で大変勉強になる。
今更気付いたが、わさびの内容が半分以上になってしまった…。
しかし、「急性腹症のCT」の某先生は「例えば2時間の飲み会で、10分でも学術的な
話ができれば、その飲み会の意味は十分ある。」と仰っていたので、このブログは
半分も学術的な内容を含んでいるから意味はあるかもしれない…。
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