2008-01-21

部屋と半纏(はんてん)と私

2008年1月21日

部屋と半纏(はんてん)と私

2年次研修医 有馬 喬


その日は、久しぶりの冬らしい夜だった。

半纏(はんてん)をはおり、こたつでみかんを食べていた。

大きいみかんより、小さいみかんが好きである。

小さいみかんは味が濃い。

皮を剥くのは難しいが…

そういえば、「みかんを1日に2-3個食べると、冠動脈疾患を有意に減らせる」というエビデンスが出たらしい。


しかし、みかんをあんまりたくさん食べると、体が黄色くなる(柑皮症)。

黄色くなっても食べるのを止めればいい話ではあるが。

黄色くなるのはカロテン(ビタミンAの前駆物質)という成分のためである。

カロテンは油に良く溶ける。

従って、脂質異常症(以前の高脂血症)のある人は、カロテンがよく血液に溶けて流れて行き、身体に沈着するので黄色くなりやすい。


一方、黄色くなるのがみかんのせいでは無い場合(肝胆道疾患による黄疸)はしっかり検査しないといけないので、
黄色い方は受診をお勧めしたい。

国家試験前なので、ついでに…

脂溶性(油に溶ける)ビタミンはA,D,E,Kだけである。

覚え方は、「友達は油DAKE(だけ)!」 

オロナミンCに入っているビタミンBとCなどは水溶性である。

飲んだ後の黄色いおしっこはビタミンBの色である。

着色料の色ではない。


ところで、半纏は風呂上り身体、特に背中を冷やさないところが実にすばらしい。

自分の体温を逃がさないことで体が自然なぬくもりに包まれる。

暖房なんて要らない!(…ってことは無いが)、暖房の温度は低く設定できるので電気代も少しは安くなるのではないか。
(よく付けっぱなしで寝て、朝声がらがら…)

未来の子供達にも是非残してあげたいものの一つである。


昔、飼っていたパグ(中国原産の犬)が半纏を着てお昼寝している有馬少年の暖かい懐に入ってきた事がある。

起きたら涎でべっちゃりんこだった。

有馬家に飼われる犬として全く不届きな犬である。

ちなみに、犬を黙って部屋に上げてそのままにしたのは有馬少年の弟であった。

有馬家の次男として全くもって不届きな奴である。


話を戻すと、年末に半纏のままコンビニに行ったら以前外来で診ていた患者さんに会った。

「あら、先生、お久しぶり!最近いないけどクビになったの?」

大きなお世話である。

「なんか田舎の人みたいですがよ?」

結構大きなお世話である。

「その姿で買い物袋持ったら、奥さんの尻に敷かれる旦那みたいだが。」

かなり大きなお世話である。

「女性の品格」家に送りつけたい衝動を抑えた。


その患者さんは糖尿病である。

ペットボトルのジュースが大好きな方だった。

「ペットボトルのジュースは飲んじゃいけませんよ。」

と外来で何回も説明した記憶がある。


「先生が、ペットボトル飲んじゃダメって言うから、パックのジュースに変えたんですよ。でも少ししか入って無いから本数増えちゃって。


・・・。

意味ねーじゃん。

しかし、言葉足らずな外来をしていた事が情けなかった。

「甘いジュースは飲んじゃダメです。」と、「奥さんの尻に敷かれる旦那」風の半纏姿で説明しても聞いてくれるかなと思いつつも、
まだまだ未熟だった自分の外来を反省した。

外来は入院患者さんと違って、ゆっくり説明できない事も多く、限られた時間の中で、最大の効果を得る説明はなかなか難しい。

あんまり早く切り上げようとすると、冷たい印象をもたれ、だらだら話すと待ってる人がイラついてくる。


帰り道。

やさしい光を放つ白い月。

その光に照らされる白い吐息。

「何でもないような事が~幸せだったと思う~♪」(THE虎舞竜 「ロード」より)

と歌いたくなるのはみんな同じ。

しかし、「ロード」のPV(Promotion Video)、白い息が素敵であるが、結構つばぺっぺである。

ちなみに、友人で「イソジンは塗布した後、乾かないと消毒の効果が無い。」と先輩医師から指導され、「フーフー」した強者がいる。


それじゃ、やっぱり、つばぺっぺである。


買い物袋の中にはおでん。

白滝を買った。

まあ何でもそうだが、良く噛まないと、食餌性イレウス(腸閉塞)の原因となる。

「白滝による食餌性イレウスを呈した医師例」と発表されたくないのでしっかり噛んだ。


おしまい。


 



2 件のコメント:

  1. 木村 圭一2008年1月21日 21:41

    この題名分かる人いるのでしょうか?
    私が学生時代の頃の歌ですがよ〜。
    ロードは1年目の終わりの歌です。東北へ一人旅(ローテーションの合間だったので1週間休みをもらったのです)している頃聞きました。

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  2. 「部屋とYシャツと私」は小学校何年生かでした。「あなたは嘘をつくとき右の眉が上がる。あなた浮気したら、うちでの食事に気をつけて。私は知恵をしぼって、毒入りスープで一緒にいこう。」
    の意味がまだ分からない少年でした。
    ロードは小学6年生でした。
    風呂の窓を全開にして「白い吐息」を吐いてました。開けっ放しにしてて、叱られました。

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