2010-04-28

研修委員長も研修中


2010年4月28日

研修委員長も研修中
研修委員長 田村幸大

木村先生が半分、研修医5人の残りの半分を書いているブログになっていますが、久々に私も書きます。

27日は東京で病理学会総会がありました。IMG_0031
私は4年前から社会人入学で鹿児島大学医歯学総合研究科先進治療学専攻腫瘍学講座人体がん病理学(「じゅげむじゅげむ・・・」みたいな名称ですね)で大学院生をやっています。本 当は今年3月で卒業だったのですが、昨年は博士論文として提出出来るデータが揃わなかったため休学していました。今年こそ博士論文を仕上げて卒業しようということで、半年前から準備を行っていました。

早期胃癌105症例の198病変を7種類の染色を行って評価するという研究です。
105×7=735枚のスライドで198×7=1386病変の評価をしました。
普段の診療が終わった後や休日に顕微鏡を眺めて評価をして、、、途中で発狂しそうになった事も数知れず。
病理組織の観察なんて、医学部時代以来です。
マラソン選手が何かの間違いでカーリングの会場に迷い込んで、突然カーリングをやっているような物です。
さらに集めたデータを統計処理して、有意差があるのか判定をして、、、幸い有意差が出たため、発表にこぎつけることが出来ました。
しかし、発表の時もどのような質問が来るのかドキドキでした。
普段診療している内科領域の事であれば何とでもなるのですが。
マラソン選手に「どうしたら完走出来るようになりますか?」とか「どのような練習をしたら坂道に強くなりますか?」と質問したら色々な答えが引き出せるでしょうが、「どうしたらカーリングで良い点数が出せますか?」とか「ストーンを目的の位置に置くコツは何ですか?」と質問しても何も出てこないでしょう。
普段、病理にドップリつかっている訳では無い私には、あまり専門的な質問に答えるだけの素養はありません。
幸い共同演者の先生に手助けして頂き乗り切りました。

後はこの発表を元に論文を作成すれば卒業です!

色々と苦労している大学院ですが、学んだことが幾つかあります。

1.地道な作業が大切
1386病変の観察をして統計処理を行いましたが、観察を進めている段階では有意なデータが出るかわからない状態でした。つまり観察をしたものの、結果が出ないという状況になった可能性もありました。多くの貴重なデータは、今やっている作業から有意なデータが得られる確証も無い中で取り組んだ人達の熱意が産み出した物の結晶なのだと感じました。
観察に3ヶ月程度の時間を要しましたが、世の中に問うことが出来るデータを出すためにはこのような地道な作業が大切なのですね。

2.約束を守ることが大切
何を今さらという感じですが、正直、指導医から提示された期限を守ることは大変でした。
2週間毎に指導を受け、2週間後までにこなしておく課題を与えられていました。
週末は応援に行って不在のことが多く顕微鏡を使うことが出来ない環境となってしまうため、必然的に鹿屋に居る時に頑張って作業を進めるしかありません。
深夜や休日に作業を進めましたが、色々な予定が詰まっている中では、時間的に辛い物がありました。
しかし、いつも指導して頂いていた星塚敬愛園の後藤先生、大学の米澤教授も非常に多忙な中、私の指導のために時間を割いて頂いていることを考えると「忙しくて出来ませんでした」と言うことは何としても避けなければなりませんでした。簡単に「忙しくて出来ませんでした」と言っていたら、途中で指導に時間を割いて頂けなくなったかもしれません。
という訳で走る時間や寝る時間を削って、意地と根性で期限までに課題をこなしていました。

3.指導される立場を忘れないことが大切
研修委員長として研修医の指導をしていますが、大学院では一変して指導される立場になります。
指導医の立場では簡単に思えることでも、初めて経験する者にとっては困難な課題という物もあります。
指導する場面ばかりになると、そんな困難を経験することが無くなってしまいます。
大学院の課題をこなす中で、初学者にとってはどんな事が困難で、どんな助言があると助けられるのかということを体感しました。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」訳ですが、熱さを思い出させてくれました。
人のやっていることにケチを付けることは簡単で誰でも出来ることです。
中々自分の姿を見ることは出来ない一方で、人の欠点は目につくので、ケチを付けることの方がはるかに簡単です。
しかし、ケチ(この場合は温かい指導ですが)をつけられる立場に立ってみると、色々と感じる部分があります。
同時に少し厳しいなと思う課題でも逃げずに取り組んだ結果、成果が得られて自信がついた部分もありました。
今まさに研鑽を積んでいる研修医と同じ立場を久しぶりに経験出来て良かったです。

多忙な中、御指導頂いた星塚敬愛園の後藤先生、大学の米澤教授、私の留守を守ってくれた内科の先生達、ありがとうございました。
今回、発表することが出来たのは周囲の方々の有形無形の支えのお陰でした。



3 件のコメント:

  1. 木村 圭一2010年4月28日 18:46

    田村先生お疲れ様でした。
    非常に大変ですね!普段もお忙しいのにすごいです!
    これからも指導する立場、教えられる立場から当院を変えて行って下さい!

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  2. 研修委員長 田村幸大2010年4月29日 8:27

    木村先生
    コメントありがとうございます。
    大学院の講義では医学教育学もあります。今年度は医学教育学も受講してみることにしました。
    これからも頑張ります。

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  3. 来年、研修医が入ってきたときには、少しは自分たちも指導することになると思います。そのときに、今の自分の悲喜交々を忘れずに、一緒に勉強したいと思います。

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