2013-12-09

9年遅れの合格


研修委員長 田村幸大

 研修医の森本先生がいつも一人で頑張って原稿を書いてくれています。元気一杯の森本先生を影ながら応援するだけではなく、研修委員長である私も表に出て原稿を書くことにしました。

 さて、去る12月3日に総合内科専門医試験の結果通知があり無事合格しておりました。試験前の1ヶ月間だけでしたが勉強もしましたし、何よりも特定の専門領域に偏ることなく内科全般の診療に常にたずさわってきた経験も試験の時には役立ちました。試験が終わったときに手応えもあったので合格しているとは思っていましたが、この合格には私だけの特別な意味がありました。

 今年で医師になって16年目になりますが、総合内科専門医の資格は最短で7年目に取ることが出来るのです。つまり最短で取得した人からすれば9年間も遅れた合格でした。合格を知ったときにその9年間を振り返って色々なことが思い出されました。

 私が大隅鹿屋病院に戻った平成15年当時、内科常勤医は私一人。認定医や専門医の資格うんぬん以前に日々の診療を行っていくだけで精一杯。そのような環境でしたが平成17年に入ると少しずつ人が増え、ようやく総合内科専門医の資格も取ろうかと考えることが出来るようになりました。しかし、受験要項を読んでみると内科学会の認定施設で3年もしくは認定関連施設で5年間の研修歴が必要とのこと。

 このまま大隅鹿屋病院で受験資格を満たすためには学会の施設認定の条件をクリアし、そこからまた3?5年の時間を要するということです。施設認定のためには解剖を3件行う必要がありましたが、大隅半島ではとてつもなく高いハードルに思えました。しかし、奇跡的に平成17年の年末に3件の解剖の承諾をいただくことが出来、平成18年から晴れて内科学会の認定関連施設になることが出来ました。大隅半島のように医師も集まりにくく、解剖に同意をいただくことも困難な地域で施設認定を取れたときの喜びは今でも忘れられません。

 そこから5年間、良いときも悪いときもありましたが平成23年にようやく総合内科専門医試験の受験資格を満たすことが出来ました。しかし、ここでまた大きな壁にぶつかりました。鹿児島大学の大学院に社会人入学をしていたのですが、当初の3年間、忙しさを理由に全く研究をやっていなかったのです。そんな私でしたが、人体がん病理学の米澤教授や後藤先生から見捨てられることなく、きちんと研究が出来るよう指導していただけることとなりました。さすがに資格取得はしばらく待って研究に集中することにしました。

 平成23年春に病理学会総会で研究結果の発表を行い、翌平成24年春には学位論文を何とか投稿できる形に仕上げました。日々の業務をこなしながらの研究・論文作成は苦労の連続ではありましたが、平成25年春で何とか大学院を卒業することが出来ました。

 大学院の研究も終わりようやく今年になって総合内科専門医試験のための症例サマリー作成に取り組み受験することが出来たという訳です。結局、総合内科専門医の資格は9年遅れ、大学院の卒業は3年遅れになっていました。

 受験資格が無ければ受験資格を満たすことが出来る施設に移るのが当然です。そこで施設認定を取るところからやり始めて・・・なんてことは多くの人はやらないでしょう。大学院の研究に時間を要するのであれば、臨床にあてる時間を削ることが当然です。そうすることも出来なかったので、留年し休学しながら亀の歩みで論文を作成しました。

 しかし、これはこれで良かったのかなという思いがあります。環境が悪いことが分かっていても、その悪条件から逃げずに頑張ってみることや悪条件そのものを変えていってみるという選択を出来たからです。亀の歩みでも良いから目標に向かって歩き続けることや最後まで諦めないことの大切さを学べたからです。

 9年間の遅れは単なる遅れではなく、大切なことを学ぶための遅れであったのだと感慨深く合格通知を眺めました。

4 件のコメント:

  1. 田村先生、合格おめでとうございます!遠くから応援しています!

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    1. keikimura99さん
      いつもありがとうございます!
      keikimura99さんも頑張って下さい。

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  2. 研修医 森本2013年12月13日 17:53

    合格おめでとうございます。
    冒頭で触れて下さっていますが、恐れ多い限りです。声を掛けて下さるだけでも励まされるのですが、実際に向き合って下さる姿勢をみせてくださるのは本当に勇気づけられます。
    今回の記事では、どういった思いで田村先生が鹿屋に拠点を置いて全国を飛び回ってきたのかの片鱗に触れることができました。またお話を聞かせてください、お忙しくされているのはわかっていますが…(^^)

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  3. ありがとうございます。
    他人との競争ではないので、確実に一歩一歩、進んでいけると良いですね。

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