2008-02-25

当たってもダメ、当たらねばなおダメ

2008年2月25日

当たってもダメ、当たらねばなおダメ

研修委員長 木村圭一


 私は学生時代弓道部に入っていました。3年生の時に友人と一緒に作ったのです。"http://202.133.118.29/shokuinboshu-rinshokenshui-boshu-shoki-kenshuiinncho.html">研修委員長の挨拶にも書いておりますが、
研修と言うのはクラブ活動に似ています。病院を選ぶ時には、クラブ活動を選ぶように選んだら良いと思います。


 この文章の題名は、静岡県だったか浜松だったかの弓道の偉い方が、昇段審査の時に言っておられた言葉です。
矢が当たるのが当たり前で、当たった場所が重要なアーチェリーとは違って、弓道はその過程を重視します(的の縁に当たろうが、
ど真ん中だろうが同じです。どうしても勝敗が決まらない時には関係あるのですが)。的に当たっても打ち方が美しくないと、
昇段できるとは限りませんよ、、、、と言う意味です。


 弓道は、射法八節と言って、
足を開いて立つ所(足踏み)から、矢を放ち(離れ)、その後の姿勢(残心あるいは残身)にまで言及しています。
矢を放つ動作までに6つの動作(足踏み、胴作り、弓構え、打ち起こし、引き分け、会)があり、放った(離れ)後に「残身(ざんしん)」
と言って良い姿勢でなければならないのです。矢を放つと言う動作が目立ってしまいますが、それは8分の1でしかないのです。例えば、
足踏みは的を見ながら足を肩幅に開くのですが、これがダメだと当たりません。やり直しは出来ませんので、最初の段階でもう当たらない、、、、
とがっかりする事もあります。矢の狙いを調整すれば良いのではないかと思うのですが、まず当たりません。
当てようとするとかえって当たらないのです。弓道は精神面に大きく影響されるスポーツなのです。


 これは医療で行う手技や治療にも通じます。例えば点滴は、血管に当たってもすぐ漏れたりしますが、
血管に当たらなければやはりダメです。点滴にもやはり8つの動作があります。これを点滴八節と呼びましょう。

 足踏み 点滴をさす時に足の位置をどうするか自分で決めておくべきですね。挿管でも足を前後に開いておくと入りやすいです。

 胴作り 足以外の体勢も重要です。

 弓構え 点滴で言えば、点滴の針の準備ですね。針の先端の切れ込みをどっちに向けるかと言う事も考えないといけません。

 打ち起こし 駆血帯を巻いて準備をします。

 引き分け 消毒をします。

 会 どの血管に刺すか触診します。「はやけ」と言ってすぐ刺すのは弓道では好まれません。

 離れ 血管に針を刺します。

 残身 点滴を刺してほったらかしでは看護師さんに嫌われます。


 一つの手技には、6つの前準備があり、手技が終わった後も色々と考えなければなりません。また、
離れまでの動作の一つでも悪いと矢が当たらないように、準備が悪いと点滴も入りません
��昔点滴の封を自分で開けないと点滴が入らないと言う先生がいましたが、弓道をやっていなかったら、なんてアホなヤツだと思った事でしょう)
。準備にしても、点滴を思う存分やれるためには、必要な針が充分そろっていなければなりません。これについても、
担当の看護師さんが不足しそうになったら資材課に注文し、資材課の方達は注文を予測して発注しておき
��マクドナルドは予想して作っておくそうですね。逆にモスバーガーは注文を受けてから作るんだそうです)みたいに、
色々な行動には多くの前準備や色々な人の見えない努力があるという事を思い出す必要があります。また、処置が終わった後は、
充分後片づけをし(医者はしない事も多いですが、少しでも楽になるよう、散らかさないのがマナーですね)、
その行動が適切だったかを検討しなければなりません。


 矢が放たれる音と残身を見るだけで、その人の弓のレベルが分かると言っている人がいました。点滴で言えば、結果(点滴の入り具合)
を見て、その場の散らかりようを見れば、その人の点滴の腕も分かると言う事ですね。


 医者は色んな所で色々な処置をしますが、陰で支えてくれている人の事を思い、準備や後片づけを大事にするように心がけたいですね。



2 件のコメント:

  1. 整形外科は腰椎麻酔で手術をすることが多く、手術室退室時に酸素を病棟から持ってきてもらうことは少ないですが、あの酸素ボンベはなかなかの重さです。
    病棟についた後、重いボンベを片付けてくれている看護婦さんには、外科の先生は感謝しないといけないと思います。1年目の外科研修の時はもちろん、今も酸素を使う患者さんと部屋まで一緒に上がった場合には、必ず自分でボンベをナースステーションまで持っていくようにしています。
    「女性に重いものを持たせてはいけまない。なぜ、神が生き物を男と女に分けたか、分かるか?女性は一生のうち、赤ちゃんという全てにおいて、最も重いものを持たないといけなのだから、それ以外は男が持たなくてはならない。」
    と、かつて柔道の師匠が言っていました。
    今日は久々に全身麻酔の患者さんがいたので、酸素ボンベを片付けました。

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  2. 木村 圭一2008年2月27日 20:58

    確かに!酸素ボンベは重いですね。気付きませんでした。
    さすが女性の事は良く見ていますね!無馬君に負ける事はないでしょう!

    返信削除

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